水彩で色付けされた手描きのマンガが読めるのが見どころ。
しかも眺めているとこんな風に着彩するのかぁとか思ったりして、
マンガっていうとコピックとか、最近だとデジタルソフトで着彩ってイメージだけど、
水彩でこういう風に色付けするのも味があっていい。というかむしろ、こういうの(の方が)いいなって思った。
水彩画で色付けされたそれは、まさしくジブリの世界観を感じさせるものだった。
アニメはもちろんベタ塗りが多いんだけど、でもジブリに感じるあの他のアニメにはない人間味や大自然から感じるような暖かさ(やわらかさ)と爽やかさと、そしてそれらの併合みたいなものが。
検索してたら、どんな道具を使っているのか書かれたイラストを見つけて、
より身近に宮崎さんを感じられたし、なにより今手元にある画材でもいいんだと思わせてくれる。
いや、もちろんホルベインの透明水彩24色がおすすめなんだろうけど、これである理由に「値段も手頃だし少しでいっぱい使えて、おすすめです。」「ここで紹介する方法は全部ぼくの自己流です いろいろな画材が出ていますが、これだけあれば充分です。安くて長持ち‼︎」「エンピツは2Bで充分1本でいい」「生涯一画材‼︎ズクなし、ヒマなし、金なし 40年こればっかし」「経験主義」「これしかできないだけです」と随所に書かれてあるように、高価な画材を揃えなくても手元にあるような画材、なんなら小学校のときに買わされた不透明水彩だって、使いこなせば、それでいいんだと思わせてくれます。
しかも「パレットに全部の色を出してしまいます。そうすればパレットさえあればいいわけです。絵の具は一寸かたまった方が使いやすいです。」「使う場所(各色を出しておく場所)を決めておくとソージがいりません。」と書いてあるように、それはまさしくその通りなのに、学校ではそのことを教えてくれないのです。
画材について書かれているイラストを見たあとに、
しげしげとこの本を見ると、う〜んと唸って、すごいな・・・とより思わされ、そして次には、力づよい励み=背中にそっと手をそえられるような感じ。
セリフも手書きで宮崎さんを近くに感じられたポイント。
さらにト書き(セリフじゃないところ)には、「コマ数が足りないので」とか「ページ数が足りないので」って言い訳が書いてあって、当時(「月刊モデルグラフィックス」という雑誌に掲載)していたときの宮崎さんのお茶目さと、置かれた状況を感じられて、クスッとなった。
また、そういった状況でこういう感じなのかぁと納得もいってよかった。
漫画家としてはコマ使いがいまいちだなと読み始めて感じたんだけど、そういうわけかもしれないし、そもそも漫画家ではないしとか思ったりして。
(しかし、調べてみたら、当人は漫画家になりたかってけどむかいないとして漫画家を諦めて、悶々としていたときに鈴木氏と出会ったーというのがあった。漫画家としてはいまいち抜きん出れなかったということなのかぁ。でも描きたい気持ちがいっぱいに伝わってきます(笑) これはすごいことです。 描きたい気持ちが伝わってくる絵とかイラストってそんなないです。みんなどうやったらカッコよく見せれるかとか、表現がうまくできるかみたいなのは伝わってきますけど、描きたい気持ち自体がこんなに溢れ出して伝わってくる絵は他にないです。しかもまだ描き足らないぞというね・・・。)
カーチスが「「いいぞ、ドアップだ」」と言ったりメタ発言が所々見受けられるのも、映画「紅の豚」とはまた違った面白さがあった。
この本の後半は「紅の豚」に出てくる飛行艇のプラモデルづくりに関する資料やインタビューがのっている。
こちらはそれこそ「月刊モデルグラフィックス」を愛読するようなファンにはもってこいだと思うが、
宮崎駿さんの手描きの前編カラーマンガをもっと見たいという場合は、
『宮崎駿の雑想ノート』
を手にした方がよさそう。しかし軍事的な色合いが強い作品が多いようなので、そういったものが特段苦手であるとかなら、
それとは別にして着彩や手描きイラストが見たいのだとできないかぎり、
購入するというのは控えた方がよいかもしれない。
図書館にもあるようなので一度閲覧して満足、もしくは、うわぁっと思って思わず投げるか、
やはり手に入れて熱心に眺めたいとで、結論が出るだろう。
そしてさらにもっと読みたい・見たい場合は、
『泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート』
という具合に集めるとよさそう。
こういう本は案外絶版になるようで、これらは増補改訂版だった。
したがって、「「いいなぁ、ほしいなぁ、どうしようかなぁ」」と思っているうちに、こんな大先生の手描きマンガであるにもかかわらず、貴重な資料にもかかわらず、絶版になることは容易に予想できるので、ぜひ、お金が許すようなら、すぐにでも手に入れておきたい一品と思う。
けれどこういうの買っているときりがなくなるよねー
などと言っているうちにまた、売り切れ絶版になってしまうだろうか・・・。
うーん、、
本当に水彩の着彩具合と、機体のカチッとした描き具合とカッコよさ、動植物の気持ちよさ、人の表情と豊かさとユーモアの雰囲気、いかにも雑想がごとく、やや適当め(もっとちゃんと細部まで描きたい、でも雑想(走り書きメモ的な感じ)に溢れ出る想像を書き留めておきたい、そして発表するはけ口ほしい(幸いにもその場が与えられた)、それ程度、だからこれくらいにしておく、与えられたページ数もないしという感じ)に描かれてる感じが、いい感じなんだ。
そういう趣味、「宮崎さんの趣味」とも呼べるべき領域のはけ口が与えられて、宮崎さんが、
“よっしゃとも思うんだけど、趣味だから、趣味なんだけどな、でも一応ちゃんとした雑誌のページもらったし対価も発生するしな、でも熱心に描ききるほどにはページ数もお金ももらえてないしな、それに趣味だしな・・・”—っていう狭間。
その狭間が垣間見えるところが、面白いです。